経営者向けコラム

成果の見える化

先日、世界遺産の富岡製糸場に行ってきました。

国宝にも認定されている、140年以上前に建てられたレンガ作りの繭倉庫があります。
当時、「レンガ」という建材は日本になかったため、明治政府が深谷(埼玉県)の瓦職人にレンガの技術を学ばせたということです。

当時の建設部分がそのまま残っていますが、その壁面のレンガは色も濃淡、形も丸みあり、欠けありと様々、140年の歴史を経て、良く言えばとても「あじ」のある風情を醸し出しています。

その対面に、倉庫から一年後に建てられた同じくレンガ作りの職員宿舎があります。
そちらの壁面は、レンガの色も形も(倉庫と比べると)均一になっています。
たった一年で、これだけ技術が進歩したのかということを見ることができます(そんな目線で見ている人はいないと思いますが(笑))。

私の想像ですが、
当時突然明治政府から「レンガというものを作ってくれ」と言われた深谷の瓦職人たちは、相当面食らったと思います。
政府も「瓦とレンガで似たようなもんだから、あいつらに頼んでみよう」くらいに思ったのでしょうか。
でも、日本の新しい夜明けのために、瓦職人たちも意気に感じて必死に技術を学んだのではないでしょうか。

今はあじがあるように見える色や形のバラつきは、なんてことはない、当時の温度・湿度管理や製造技術などの未熟さの表れでしかありません。
しかし、その後も必死に技術を学び続け、一年後には見違えるほどの技術の進歩の「成果」をその壁面に残してくれたのです(勝手に想像して感涙)。

経営では「成果の見える化」ということがよく言われますが、140年たった今でも私たちに明確な評価ができるほどの「成果」を見せてくれているのはスゴイです。

みなさまの会社では、社員をどのように評価していますか?
まずは評価の基準となる成果をしっかり見える状態にしていますか?
「成果」が(本人にも)見えない状態のまま「評価」をするから、納得感が得られないのではないでしょうか。

レンガを見ながら、そんなことを考えました。

ちなみに、この深谷の瓦職人たちが、のちに東京駅の赤レンガなど日本の近代建築を支える集団になっていったそうです。