経営者向けコラム

「言い訳できない環境づくり」に物申す

部下マネジメントのセオリーとして言われていることの一つに、
「言い訳できない環境づくり」ということがあります。

例えば、営業マンが受注を取れないとき、彼らは価格が高いだ、商品力が低いだ、原因とも言い訳ともとれることをいろいろ言います。

これに対して、ふざけるな、バカヤロー、もう一度行ってこい!!と罵倒する上司もいるかもしれませんが、マネジメントを少しでも勉強している上司なら、ここはその気持ちをぐっとこらえて、
「彼らに真の理由を考えさせ、次はどうすれば売れるのか、自ら答えを見つけさせる」
、という回答を出すでしょう。

さらにできる上司であれば、
「彼らが言い訳をできる要素を一つずつつぶしていき、自ずと言い訳できない環境を作ってしまう」
という回答をするでしょう。
これが良く言われるできる上司の「言い訳できない環境づくり」というマネジメントテクニックです。
教科書的にはとても素晴らしい手法だと思います。

しかし、私たち中小企業の経営者が社員の「言い訳できない環境づくり」をやってしまったらどうなるでしょう。
社員を追い込み、最終的には辞めてしまい、困るのは自分自身です。

はっきり言います。
社員は言い訳したいのです。
むしろ社長は「言い訳できる環境づくり」をするべきではないでしょうか。


先日、顧問先でこんなことがありました。
会社が提供するインフルエンザの予防接種をわざわざ「接種しない」人がいました。
考えてみると、彼は毎年ちょうどいい頃にインフルエンザで長期に休んでいます。
ここからは私の推測ですが、彼は「インフルエンザにかかった」という言い訳が欲しいのです。
一生懸命働いている真面目な彼は、普段休みたくても休めない性格。
ちょうど疲れがたまったころ、「インフルエンザ」にかかるのです。
嘘ではなく、本当にかかるのです。

真意はわかりません。
でも、社長ならそのくらいの想像力で、かつ、それを許容するくらいの度量が必要です。
疑ってはいけません。
社員は「言い訳」が欲しいのです。

私たち経営者にとっての「言い訳できない環境づくり」とは、社長自身、自分自身をいましめる意味での「社長が言い訳できない環境づくり」をすることであり、けして社員に対してやってはいけないのです。