経営者向けコラム

「監視されている」と「見てくれている」の境界

先月、顧問先企業の一つが、月次で過去最高売上を上げました。
実は2ヵ月前にあることを仕込んでおきました。

非常に単純なことをやりました。
全国12カ所の営業拠点に「カメラ」を設置して、全営業所がお互いを常時見える状態にしました。

マンションの一室、常駐者が1名~2名というところが大半で、これまでは日々の数字の報告だけをもらっていました。
本部から営業所に人が行くこともほとんどなく、営業所間の交流もありません。
それぞれが独立王国でした。

それがカメラをつけた途端に過去最高の業績をたたき出したのです。
もちろん、年度末であることや景気の状況など外部環境の影響は大きいと思っています。

しかし、少なからず「数字の報告さえしていれば、何をしても自由」という状態から、「社長に見られている、監視されている」という緊張が走って、仕事への取り組み姿勢が変わったことは事実です。
実際、カメラを付けると告知したときの各営業所の抵抗はすさまじかったです。

一方で、単に「監視されている」と思わせる(管理する)だけで過去最高業績になるほど人は単純ではありません。
大事なのは、「あなたたちの仕事ぶりを見てますよ、評価してますよ、期待してますよ」というメッセージにいかに変えていけるか、ではないでしょうか。

最初はカメラに手を振ったり、「見られてる感たっぷり」だった人たちが、そのうち全くカメラを気にしなくなりました。
そのころから業績がグングン伸びてきました。
おそらく、見られている→見ている→見てくれている→一人ではない…というふうに変わっていったと思います。
マンションの一室で一日中ずっと一人で仕事をしている彼らにとっては、孤独からの解放だったのでしょう。

「カメラをつける」という一つの事実が、とらえ方によっては「監視されている」というネガティブマインドにも「見てくれている」というポジティブマインドにも変わっていくものです。
経営者はその辺の心の機微を感じ取って舵取りしなければならないのです。