経営者向けコラム

経営者の最大の敵は「慢心」

友人の社長と一緒に福岡県直方市にある「もち吉」の本社工場、本店周辺を視察してきました。

もち吉というと、西のほうの人にはせんべい・あられ屋さんとして身近な存在ですが、関東のほうではあまりなじみがありません。
時々お中元やお歳暮で缶に入ったおせんべいをもらってテンションが上がる「高級おせんべい」というイメージでしょうか。
最近は関東にも路面店を出店しており、少しずつ認知度が上がってきています。

そんな「もち吉」ですが、実は売上約200億円を誇るお菓子の小売りとしてはかなり上位に入る優良企業です。
そんな200億企業の工場隣接の「本店」はさぞかし立派なのであろう…と思って行ってみたのですが、超ショッキングでした!

ボロボロのパチンコ屋を適当に改装しただけ…。
ゆるーい感じのおばちゃんが、店頭でのんびりもちを焼いている。
中は商品ディスプレイがどうのこうのと言うまでもなく、適当におせんべいが置いてある。
お店の正面のコンクリートが崩れているけど、そんなのお構いなし。
トラックをそのまま横づけして、倉庫代わり。
急な階段には手すりをつけてあるだけ。

中に社員食堂ともドライブインの食堂ともいえぬ手作り感満載の空間がありました。
机イスもコップもバラバラ。
どこかの中古を集めてきたのでしょう。
店内はおっちゃんおばちゃんが適当に飾ったと思われるポスター。
そこで350円のからあげ定食を食べました(笑)。

これが200億企業の本店です。
ある意味衝撃でしたが、同時に本当に感動しました。

実際の事情はわからないので、ここからは私の推測です。
経営者はちょっと儲かれば自分の実力を過信して本社ビルや土地建物、かっこいいオフィスへの移転など、収益を生まないものへの投資の誘惑に駆られます。

稲盛さんが言うように、売上を最大にして経費を最小にすることが経営の基本…とわかってはいても、どこかに慢心、油断が生じ、見た目のカッコよさやイメージの良さ、自己満足に走ってしまいます。

お客様のためと言いながら、実は顧客不在で自分をかっこよく見せたいだけ…。
そうならないためのいましめとして、もち吉の社長は200億企業になっても、「あえて」自社工場のおひざ元にそのようなボロボロの本店を置いているのではないでしょうか。

ちなみに、工場の会議室はプレハブでした。
そして、極めつけが、そのパチンコ屋本店の隣に、おそらく本店として建てたのであろう新しい建物がありましたが、閉鎖・放置されていました。
きっとこんな社長でも、過去に慢心してかっこいい本店を建ててしまったのでしょう。
そんな自分へのいましめとして、そのまま放置しているのではないでしょうか。

全て私の推測の域を出ていませんが、非常に考えさせられる体験でした。