経営者向けコラム

柳井さん「変われない人を否定しても始まらないと気づいたんです。」

2014年3月24日号「日経ビジネス」に衝撃的な記事が掲載されました。

ユニクロが1万6000人のパート・アルバイト社員を正社員化するというニュースはご存知の方が多いと思います。
実はこのニュースに対しては、私はアベノミクス以降最近各企業が取り組んでいる賃金上昇、待遇改善、雇用確保の一連の情報として正直スル―しておりました。


ところが、日経ビジネス掲載の柳井さんの記事には、それとはまったく別の趣旨、もっと言うと、柳井さんの経営観を根本から変えるような話が出ていました。

ご存知の方も多いと思いますが、ユニクロは柳井さんという強烈なカリスマ経営者のエンジンと本部主導のアクセル、そして、志の高い店長をドライバーとした店舗展開(パート、アルバイトは部品?)、全員が世界を目指せ、ついてこられないヤツは去れ、という厳しい考え方で日本を代表する小売企業にのし上がってきました。
ところが、今回のインタビューでは、この考え方が間違っていた、と明確に自己否定しています。
そこで今回のタイトルで言っているようなコメントをしています。
以下、そのまま記事を引用します。

「僕は1人ずつの人を説得したら変えられると思ったんですよ。
でも人はやっぱり自分の過去とか自分の経験とか自分の能力とかいったことで変えられない人もいる。
でも変えられない人を否定してもしょうがないなということなんです。
だから変えられなくもこつこつと頑張っている人は、それはそれとしてやっぱりいい人生だったなと言ってもらえるようにしたい。
そういう単純なことです。」


これまでの柳井さんの考え方は、ベンチャー企業が成長していく過程では絶対に必要なことで、成長期に多様性だのワークライフバランスだの従業員の生活保障だのと言っている会社はそもそも厳しい競争を勝ち抜いて生き残っていけません。
ところが、ある程度成長し、規模も大きくなり、従業員数も増えてきたときに、同じやり方で突っ走っていると必ず限界がやってきます。
創業期からのメンバーは今まで通り変わらず仕事をしているだけなのに、世間はブラック企業だのなんだのと言いだすのです。

大きな企業になれば、それだけ多くの人をひきつけ、様々な人が入ってきます。
同時に、様々な考え方や能力を許容しないと、それ以上の規模には成長できず、結局は人が辞めていき、気が付くと一定以上の拡大はできなくなってしまっているのです。

柳井さんは、ここに気づいたのでしょう。
これからユニクロがもっともっと拡大していくために考え方を大転換したのです。

世界に出ていくために厳しい考え方を取っていた人が、実際に世界に出たときには真逆の考えにならないと生きていけない。
非常に皮肉な話であり、ここが経営の奥深さ、面白さだと思います。