経営者向けコラム

劉さんの教え

先週、顧問先企業の社長と一緒に、加工を委託している中国の工場視察に行ってきました。

計4日間の工程をずっと案内してくれたのが、工場の前社長の劉さんです。
現在劉さんは工場の経営を他の人に任せ、自分は新しい別の事業を苦労して立ち上げ、それを軌道に乗せつつあるところです。
バイタリティあふれる方で、日本語もペラペラ、中国全土を飛び回るスーパービジネスマンです。

なぜ、こんな大きな工場があるのに、わざわざ自ら別の事業を立ち上げたのか?

昨年からお付き合いさせていただいていますが、ずっと疑問のままでした。
今年は、帰りがけにビジネスについてじっくり話す時間が取れたので、単刀直入に聞いてみました。

劉さんいわく、現在の工場で手掛けている事業・商品は汎用品である。
中国の経済レベルが上がって国民の生活レベルが上がってくれば、自然と需要も増えるので今の事業がなくなることはないかもしれない。
しかし、同時に汎用品であるがゆえに誰でもできる事業であり、いづれは必ず価格競争になり、利益が取れなくなってくる。
そうなる前に、もっと高付加価値の商品開発をして、他社が気づいたときにはマネできないか、たとえマネをしようと思っても、すでに3年は先に行っているような状態を常に作っていなければダメだ。
工場の現経営陣にはその危機感が薄いので、自ら未開の地を切り開いている、ということです。

実際、劉さんが孤軍奮闘で立ち上げた現在の事業は順調で、その言葉の通り、高付加価値かつブランド力で中国国内に新しい市場を作り、純利益が40%を超える状態になっています。

今日のメシと、明日のメシ。
ビジネスはバランスが大切です。


しかし、口で言うのは簡単ですが、実際は今日のメシを稼ぐことに精一杯で、3年後や5年後の明日のメシを見越して経営をできている社長は多くありません。
ましてや、それを社員に期待してもできるはずもありません。

劉さんのように経営者自らが先頭に立って汗をかき、新しいビジネスを切り開いていかなければ、永久に新しい事業は立ち上がらないでしょう。
スーパービジネスマンの劉さんにあらためて教えていただきました。