良品計画の松井会長が「無印良品は仕組みが9割」という本を出しています。
非常に参考になる本です。
無印良品の業績が下降した際に、賃金カットやリストラをするのではなく、「努力を成果に結びつける仕組み」「経験と勘を蓄積する仕組み」「無駄を徹底的に省く仕組み」を作ることで組織を復活させたという内容です。
一言で言ってしまうと、「マニュアル化」を徹底的に推進したということです。
話は変わって、先日、この本を読んだある社長から、ぜひ、自社でも無印良品のような業務のマニュアル化を進めていきたいので手伝ってほしいということで、新しいプロジェクトがスタートしました。
なんとなく嫌な予感がしていたので、そのプロジェクトをスタートする大前提として、部門長全員が集まる機会に社長からその趣旨を直接説明していただき、さらに、「マニュアル化」というテーマで意識のすりあわせのためのミーティングを実施しました。
案の定、予感は的中しました。
まず、部門長たちの「マニュアル」という言葉に対するイメージがバラバラです。
どちらかというと、「マニュアル人間」という表現があるように、「創意工夫をせずに決められたことだけをやる」、とか、「つべこべ言わずにこれをやれ、という管理ツール」とか、「どうせマニュアルを作っても、現実はマニュアル通りにいかない」、など、マイナスのイメージが先行しました。
また、肯定的にとらえている人でも、「1から10までマニュアル化するのは難しい」とか、「これは経験やセンスが必要だからマニュアルにはできない」とか、「営業など相手がいる仕事はマニュアルに向かない」など、の意見が多数でました。
このままこのプロジェクトを進めていたら、大変なことになったぞ、と、改めて嫌な予感がしたことが正しかったことを確認できました。
ミーティングで出てきたご意見というのは、まさに、「マニュアル」という言葉に対しての固定観念です。
今回社長がやりたかったことは、「○○マニュアル」という冊子を作ることが目的ではありません。
人による仕事のばらつきをなくす、その人が辞めてしまったら何も会社に蓄積されない状態をなくす、人によって判断基準がぶれることをなくす、毎回同じことをやるためにいちいち確認していることをなくす、効率的な仕事をしてみんなが早く帰れるようにする、などの「効果」を求めています。
その効果を一番うまく引き出すためにはどうしたら良いのか?
その一つの切り口が業務の標準化であり、仕組み化です。
仕組を明文化しないとみんなに伝えることができないので、わかりやすく「マニュアル」という言葉を使っているだけです。
しかし、マニュアルという言葉があまりに私たちの固定観念に結びついてしまうため、できることのアイデア出しより、できないことの克服のような思考回路になってしまい、ちょっと油断すると「あれもできない、これも難しい」と、無意識のうちに抵抗勢力になってしまうのです。
今後プロジェクトでは「マニュアル」という言葉をあえて使わないようにしていきたいと思います。
あらためて言葉の力を思い知りました。