経営者向けコラム

考えた時間の量

ある会社の若手社員育成の一環として、特定のテーマに対して、1人20分間のプレゼンテーションを実施するという機会を設けました。
調査の仕方、プレゼン資料の作り方、発表の仕方などを細かく確認しながら進めていきました。

参加者のひとりについて、非常に気になる点がありました。

彼は非常に優秀な人物です。
設定された1つひとつの課題に対して、効率よく作業を進めていき、だいたいは最初に終わります。
そして、個別のテーマが終了すると、そのまま考えることをやめてしまい、残りの時間はみんなが終わるのを待っているのです。

早く終わるのは頭の回転が速い人の特権かもしれません。
周りの人は必至で考えをまとめているのに、かれは涼しい顔をしています。
最終的なプレゼン資料についても、一番早く作り上げました。

さて、発表当日です。
必死にもがいて、時間をいっぱいまで使った人たちは、やはり発表も20分ぎりぎりまで使い切る素晴らしいプレゼンでした。
一方で、涼しい顔をしていた彼のプレゼンは、14分で終了しました。
案の定、聞いていて不明点も多く質問もたくさん出ました。
最終的に経営陣からの指導が一番入ってしまいました。

彼の事例は、私たち経営者にもあてはまるのではないでしょうか。

そこそこの時間でパッと考えたことは、やはりそこそこの結果にしかならない。
必死にもがいて、考えて続けて、それでも結論がでなくて、調べて、人に相談して、でも迷って…。
ここまで考えても良い結果が出るとは限りません。
しかし、考えた時間はけして無駄ではなく、考えた時間の量がそのまま成功の可能性の高さになると思います。

よく、「そんなに考えてもムダだよ」とか、「もっと簡単に考えたほうがいいよ」などとアドバイスする人がいますが、それは考えた結果としてそういうことが言えるのであって、考える前に「考えないほうがよい」なんてことは絶対にないと思います。

また、ビジネスはアイデアやひらめきが大事だといいますが、考え続けているからこそ、何かを見て突然ひらめくのです。
考えもしないで、アイデアが天から降ってくることなどないと思います。
大抵の人は途中で考えることをやめているのです。

私自身の彼への指導不足を反省しつつ、そんなことを考えておりました。