知り合いのコンサルタント会社の経営会議でのエピソードです。
その会社では、社長と役員のコミュニケーションがうまくできておらず、いろいろな問題が発生していたそうです。
経営会議の場で、ある管理職が口火を切ってその点を指摘し、それに他の幹部たちも同調して社長の批判になりました。
結局、社長がその非を認めて、これからは経営陣がしっかり会話を増やし、一枚岩でいくことを約束し、涙涙のうちに劇的な経営会議が幕を閉じた、とのことです。
この話をしてくれた知人も、「『雨降って地固まる』で、このような機会があって結果として良かった」、と言っていました。
この話、どう思いますか?
「うちの会社では、経営会議の場で社長(私)にこんな指摘をしてくれるような社員はいないよ。やっぱりコンサル会社はすごいよね」と思った方。
確かに、中小企業では社長は絶対的な存在であり、その社長に意見をするというのはよほど腹の座った人か、逆にKYな人しかいません。
経営会議で社長に意見が言える会社というのは、ある意味すごい会社だと思います。
しかし、この話を聞いたときに、私はむしろ「がっかり」しました。
曲りなりにも、各部門の責任者が集まっている経営会議の場で、
「会社の問題は経営陣の不仲にある。
社長と役員がもっと仲良くしてくれれば問題は解決する。
さあ、何とかしてくれ!!」
と言っているわけです。
私は「ちょっと待て!!」、と言いたいです。
確かに、私が外部のコンサルタントの立場でこの会社の社長と話すときには、おそらく「役員と接点を増やしコミュニケーションを密にして、思いを一つにして経営に当たりましょう」というアドバイスをすると思います。
しかし、幹部社員たちが同じように「経営陣が悪い。経営陣がもっと仲良くしろ」と言っても、何も解決されません。
経営陣の仲が良かろうが悪かろうが、部門の責任者として自分自身で解決できることがたくさんあるはずです。
社長のせいだ、役員のせいだ、と言っている段階で、すでに原因他人主義です。
本当に会社のことを考えている人であれば、まずは自分のできることを自分のできる範囲内でやりきる。
そして、できないことを経営陣に相談してできるようにしていく。
中小企業の幹部社員として価値ある人材は、にわかコンサルタントとして経営陣に意見する人ではなく、黙々と自分のやれる領域を広げていく実務家ではないでしょうか。
社長としては、意見を言ってくれる人材に目が行きがちですが、実は意外と「意見を言うパフォーマンス」をしている「計算高い人」も多いです。
そこをしっかり見極めないと、別の意味で裸の王様になってしまいます。
この話を聞いて、そんなことを考えました。