今年5月の「週刊ダイヤモンド」100周年記念の特別企画「115人の経営者が選んだベスト・ビジネス書」特集で、2位のドラッカーに圧倒的な差でベスト1に選ばれたのは、司馬遼太郎の『坂の上の雲』でした。
「ビジネス書とちゃうやん!!」と突っ込みつつも、実はお恥ずかしい話、こんなに有名な著書を人生の中で一度も読んだことがありませんでした。
いい機会ですので、さっそく単行本8巻を購入して読みました。
ご存知の方も多いと思いますが、この小説は、秋山好古・秋山真之という軍人兄弟と、その友人である俳人の正岡子規を主人公として、当時小国である日本が大国ロシアと戦ってかろうじて勝つ、日露戦争を舞台にしています。
明治の日本人の英知と勇気と合理性に、読んでいて胸が熱くなりました。
そんな坂の上の雲を読んでいて、体に電流が走った一文がありました。
仕事柄マネジメント関連の書籍は相当数読んでいますが、震える一文に出会ったのは久しぶりです。
日本軍の騎兵部隊を作り上げ、世界最強のロシア騎兵団を破った秋山好古の日露戦争出兵時の一節です。
【習志野を出発したのは、二十九、三十日であった。
このとき、好古は日清戦争のときもそうであったように軍刀はもってゆかない。
演習用の指揮刀をつっているだけである。
~中略~
「なぜ軍刀をお用いにならないのです」と、副官がきいたが、好古は笑っているだけで答えなかった。
かれにいわせれば、「おれがみがきあげた日本騎兵がおれの軍刀だ」ということになるであろう。…】
ビジネスという戦場で、部下こそが自分の武器だと言える組織作りと、死をも恐れず彼らを信じ抜ける胆力。
いかがでしょうか。
自分の軍刀(自分こそ)が一番の武器だと思っている。
いざとなったら自分が死なないために自分の軍刀が必要だ。
そう考える経営者が多いと思います。
好古は違います。
部下こそが「軍刀」なのです。
あらためて、深く考えさせられる一文でした。