経営者向けコラム

「正直さ」と「誠実さ」のちがい

著名なマネジメント、リーダーシップ関連の書籍の中で、リーダーに不可欠な要素としてもっとも多く登場する言葉は、「Sincerity」という言葉です。
日本語にすると「誠実さ」ということでしょうか。

では、「誠実」とはどんな概念なのでしょうか?

「あの人は誠実な人だ」「とても誠実な方です」などと言うときには、「正直で裏表がない」「真剣な態度で接してくれる」というような感じで使っています。
広辞苑で調べてみると、
「誠実→他人や仕事に対して、まじめで真心がこもっていること」。

なるほど。
これが、社長をはじめ、企業のリーダーにとってはもっとも必要なことなのですね。

これに関連して、「7つの習慣」(スティーブン・コヴィー著)に興味深い記述がありました。
以下、引用します。

「誠実さは正直という概念を含んでいるが、それを超えるものである。
「正直」とは真実を語ることである。
つまり、言葉を現実に合わせることである。
それに対して、「誠実さ」とは、現実を言葉に合わせることである。
つまり、約束を守り、期待に応えることなのだ。」


ちょっとわかりにくいので、最近私の顧問先であった事例で解説します。

営業課長の会議でのコメントです。
今月の具体的施策として計画していたことが手つかずの状態になっていました。
課長いわく、「私がさぼっていたため、今月も実行できませんでした。」と。
たしか、先月も先々月も同じコメントをしていました。

この課長は、真実を語っています。
つまり、言葉を現実に合わせていますので、「正直」です。
正直に本当のことを言っています。

しかし、自分で「やると言った」ことを、いつまでたってもやっていません。
つまり、現実を言葉に合わせていません。
したがって、「誠実」ではありません。

とても正直で人柄も良く、みんなに好かれるのですが、リーダーとしては誠実でないという点で現状は落第点です。

このように、リーダーは正直であることは大前提ですが、それだけではダメだということなのでしょう。
難しいことですが、「正直」と「誠実」を混同しないようにしたいと思います。