私の顧問先の社長と話していたときのことです。
社長は20代で先代から受け継いだ赤字家業を孤軍奮闘で立て直し、今では九州を代表する菓子店に育て上げた非常に立派な方です。
会社が軌道に乗った現在も、再建当時よりもさらにパワフルに理想を追い求めて働いています。
そんな社長が嘆いていました。
「会社の目指すべき姿、100年後も存続していくべき思い、すべて明確になり一切ブレなくなった。幹部社員にも毎日語っているし、この思いにみんな共感してくれている。この前の新店出店のときも、同志として寝ないで一緒に頑張った。なのに、突然会社をやめると言われた・・・。」とても悲しそうな顔をしていました。
社長は本当に私心の無い人です。
燃えるような思い、そして、世の中のため、社員のために自分を犠牲にして頑張っている姿、すべて嘘偽りがないことは私からみて間違いありません。
しかし、社員にとっては、この社長の燃える思いが熱ければ熱いほど重荷になっているのではないでしょうか。
社長は会社の幸せと自分の幸せが完全に一致しています。これが社長のモチベーションの源泉です。
しかし、社員はどうでしょうか?
社員が理念に共感していることは間違いありません。
一方で社員はその理念の実現を通じて、「自分自身の幸せ」を求めているのではないでしょうか。
会社の100年後はとても大事です。しかし、それと同じくらい、子供の顔を見たり、家族と過ごしたり、自分だけの時間を作ったりすることも大事なのです。
こちらがモチベーションの源泉になっています。
社長の思いに応えようと必死に頑張っていますが、結果として疲弊して最後は「社長エキスプレス」から脱落してしまうのではないでしょうか。
社員にとって、「共感」と「モチベーションは」別のものだとあらためて感じました。